甲府方面にある旅館に泊まった時の話

Posted on 2月 2, 2017

甲府方面にある旅館に泊まった時の話。
俺と彼女が付き合い始めて1年ちょっと経った時に、記念にと思い電車で旅行をした時の事。
特に目的地も決めておらず、ぶらり旅気分で泊まる所も適当に確保する、という感じの旅行だった。初日は山梨方面に向かい、なんとなく清里で降りてホテルに泊まった。
次の日、ホテルを出て富士山方面に電車で向かった。甲府駅で降り、城跡を見たりして、夕方近くに再度電車に乗り込み静岡方面へ。
途中で温泉街を見つけたため、その日の宿を探そうと電車をおり、駅においてある案内板で旅館を探し電話をした。
近場の旅館やホテルは満室だった為、温泉街から少し離れた宿に電話をして空室を確認し、迎えに来てもらった。
迎えの人は30分過ぎても来ず、1時間後に軽のワゴンで到着した。この時点で少し嫌な感じがしたが、(霊的な意味ではなく、失敗したかなと)
迎えに来てもらっている手前、何も言わずに車に乗る。車はきれいなホテルや旅館を尻目にずっと進み、山奥の方へ。周りには川しかない環境で、不安は更に増していった。
結局、着いた旅館はボロボロで、周りには店も何もない。既に辺りは暗くなっており、本当に廃墟のようにしか見えない。旅館に着いたは良いが、女将が迎えるわけでもなく、仲居が来るわけでもない。
運転してきたおじさんが部屋案内をする始末。食事の時間だけ告げると、そのおじさんも直ぐにどこかへ。客は一応他にも居るようで、横の2部屋がうまっていた。
食事まで時間があったので「先に風呂に入ろう」と言うことになった。でも、風呂場へ着くと風呂は一つしかなく、女性と男性の使用が交互に時間で区切られていた。
その時間帯は女性の使用時間だったため、彼女だけ先に入ることに。俺は疲れのため、部屋で炬燵に入りながらウトウトしてた。
それからしばらくして、いきなり金縛りに。炬燵の中に入れていた足先から、ゆっくりと何かが這い上がってくる感じがしてるけど、身動きが一切とれない。
ズズズという音が耳元で聞こえ始め、まぶたを開けようにも、眼球の上を皮ごしに誰かが押しているような感じで、目が開けられない。
耳元のズズズという、何かを引きずるような音は近づいてきており、ズズズに混じって人の息遣いが聞こえる。
ズズズ、ハァ。ズズズ、ハァ。という一定のリズムで、誰かが何かを運んでるような感じの音と息遣い。
そして「タスケテ。タスケテ」と小さく聞こえる呟き声。足元からは何かが這い上がってきてるように感じる。
その時、入り口の襖が開き、彼女が戻ってきた。それと同時に金縛りも解けた。かなり汗をかいており息も荒くなっていた。
彼女は心配していたが、あまり心配させたくなかったのと、自分自身も安心したかったので、「変な夢を見ただけ」と言い、風呂へ行く準備をした。
しかし、男性の使用時間は食事を持ってくる時間と重なっていた為、先に食事を食べる事に。
この食事が不味い事、不味い事・・。
食事をした後に風呂場へ向かうと、誰もおらず独占状態。誰も居ないのを良い事に風呂場で泳ごうと思い、足を湯船につけるとぬるい。ぬるすぎる。その為、湯船に入っても全然温まらずに寒くなる一方。
イライラしながら更衣室に向かう途中、窓から「コツコツ」と誰かが叩いた。ビクッとして窓を見るが、外は真っ暗で何も見えない。
先程の金縛りを思い出し、怖さが急に沸いてきて、逃げ出すように更衣室のドアを開けようとした。
その瞬間、「コンコン」と再度誰かが窓を叩く。コンコン、コンコンと2度3度と繰り返し叩いてくる。
何かを確かめようと、窓に目を向けかけた時、
コンコン(ズズズ)コンコンと、何かを引きずる音がまぎれて聞こえた。
そのため、直ぐに更衣室へ行き、体も拭かずに浴衣を着て部屋へ逃げ込んだ。
部屋に戻り、彼女に先ほどまでの事を話すと、
彼女は「ここお化け屋敷みたいだもんねー」と、俺を落ち着かせるために笑いながら、「疲れよ、疲れ。暖かい物でも買って来るね」と言って部屋を出た。
俺は怖いのと、彼女にそんな醜態を見られて恥ずかしいのとで、複雑な気分で待っていた。
しばらくして、彼女がココアを持ってきてくれたので、それを飲み、押入れの上段から布団を取り出し、敷いて早めに寝ることに。(布団も自分で用意する旅館でした)
二人とも疲れていたため、直ぐに眠りについた。
が、夜中にいきなり横の部屋から叫び声が聞こえて目を覚ました。彼女と二人で顔を見合わせて、何があったのか耳を澄ましていると、横の部屋の客が、廊下にパタパタと逃げている音が聞こえる。
女性客2人らしく、二人でワーワー言いながら廊下で騒いでる。夜中に何を考えてるんだ、というのと、睡眠を邪魔されたのとで、文句を言おうと怒り気味で廊下へ出た。
俺が廊下に出た事に驚いたようで、女性客は大泣きしながら「キャーーーー」と叫びだす。その声に、彼女も何事かと廊下へ出てきた。
彼女達は泣きながらガクガク震えており、一人に至っては発狂状態になっている。さすがに怒る事はせずに、「どうしたんですか?」と聞くも震えるのみ。自分達の部屋へ呼ぶも、拒否して首を振る。
しばらくその状態が続いたが、彼女らは段々と落ち着いてきた。しかし「どうしたんですか?」と聞いても、その質問には一切答えない。
ただ、彼女達の部屋に何かあるようで、ずっとその方向だけをみて「あっ、あっ」という感じ。
何か不審者でも出たのかと思ったため、自分の部屋に戻り、入り口にあった箒を持って彼女達の部屋へ入ろうとすると、 「あ、や、やめたほうが・・・」と服を引っ張り止められる。
「あ、いや、大丈夫ですよ。何かあれば直ぐに逃げますから」と言い、中へ向かった。
中は明かりがついており、入り口から部屋全体を見渡せる。変わったところは何も無く、誰もいない。
廊下へ戻ろうとしたときに、入り口の真横からズズズ ズズズと音がした。焦って廊下へ逃げ出したところで、誰かが入り口横の押入れに居るんだなと思った。
すぐに部屋のドアの前で身構えて、「おい、出て来い」と叫んだ。すると横の部屋から男性客が出てきた為、又女性客たちの悲鳴が聞こえた。
男性客に事情を話し、多分部屋の入り口横にある押入れに、誰かが隠れてるのではないかと伝えると、男性が従業員を呼びに行くように女性達に指示した。
男性客は「私が中へ行くから援護してください」と、彼の部屋から同じように箒を持ってきて中へ。
まずはドアを開けて部屋を見渡す。誰も居ない。次に横の押入れのドアの前に立ち、開ける準備をした。
その時、ドン!!ドン!!っと押入れから鳴り、ズズズ、ズズズという音と共に、襖が少しずつ開き始めた。
襖はゆっくりと開いていき、その襖の間から何かを引きずっている音とともに、人の体の一部らしきものが見え始めた。
襖の間から手が出てきた瞬間に、男性客は思いっきり襖を閉めて、相手の手をはさんだ。しかし、その手の主は何も言わない。
それどころか、ズズズとはさまれた手を出してくる。すかさず男性客は、その出てきている手を思いっきり箒の柄の部分で殴る。
が、相手は何も言わない。
俺は何だか嫌な気分になり、箒でおもいきり手を中に押し込めた。
その瞬間、ガンガン ガンガンと後ろの窓がたたかれれ、「ああぁあぉっぁあ」と変な声が聞こえたので振り向くと、窓ガラスがまるで鏡の様な状態になり(外が真っ暗だった為)、部屋の様子が映っていた。
箒を持って立っている俺。
その横に同じように箒を持って立っている男性客。部屋の様子は同じ。
ただ違うのは、窓ガラスに映っている押入れは開いており、押入れの上部分に、奇形の人間らしきものが、ベタと這い蹲ってこちらを見てる。
一瞬何がなんなのか分からないまま直ぐに押入れに向き直ると、部屋の押入れが開いた状態になっている。
ただ、そこには誰もいない。男性客も同じものを見たらしくキョトンとしてる。
どちらともなく、再度窓ガラスを見るも、窓は部屋の様子を映しているのみ。そこには先ほどの奇怪な人物は居ない。
それから30秒ぐらいたったあとに、従業員の女性を連れて来た彼女達が戻ってきた。男性客と俺は何をどう説明すればいいのかわからなかったが、起きたままの事を話す。
女性達は「もう、いやー。帰る。もう、帰る」と泣きながら叫び、
従業員は「そんな事在る分けない。今までそんなことがあったことは一度もない」の一点張り。
男性客が「確かに居た筈なんですけどね・・・なんだったんでしょうか」と俺に聞いてくる。
彼女も「本当に見た?見間違いじゃなくて?」と不安な様子。
俺も本当に見たのかどうか段々と分からなくなる。ただ、箒で叩いた時の手の感触などはある。男性客も同じようで、「見間違いのはずはないですけどね」と言う。
従業員は「この旅館でそのようなことはありません!」とむきになり、部屋へ入り押入れを見渡す。そこには何も無い。押入れの下部分には布団が入ってるのみ。
「誰もいないじゃないですか、ただの見間違いです」と威圧的な態度で言う従業員。ただ、振り向いた際に「ヒッ」と、驚きの声を出し尻餅をつく。
俺は何が起きたのかわからずに、従業員が見ていた方向、窓を見るも何も映ってない。再度「ひぃーー」と、押入れから離れて廊下に逃げ出す従業員。
何が何だかわからない客一同。
「何ですか?どうしたんですか?」と聞くと、「下、押入れの下」と言う。
直ぐに男性客が部屋に入り、押入れ下をみるも布団があるのみ。反対側の襖を開けて確認してもやはり布団があるのみ。
「なんですか?何も無いですよ?」と言った瞬間、6人全員がいる状況で、窓ガラスがコンコン、コンコンと叩かれた。一斉に窓を見る。
窓には部屋が映っている。人数は合わせて6人。窓には廊下に座ってる従業員も映ってる。
女性達も映ってる。俺も彼女も映ってるし、男性客も映ってる。ただ、布団と布団に挟まれてもう一つ顔がある。
男性なのか女性なのかは分からないが、顔らしきものがある。男性客が直ぐに押入れから離れて確認する。その様子も窓には映っている。
しかし、俺を含めた他の人たちの目は、窓の中の押入れに釘付け。その顔らしきものは、ズズズ ズズズと音を出しながら出てこようと、顔を引き摺って体を捩ってるように見える。
ズズズ ズズズ の間に、ハァと息遣いも聞こえる。
男性客はそこから逃げるように後ろへ。それを追いかけるようにズズズと顔も出てくる。そこで彼女は違和感を感じたらしく、「そっちじゃだめ!」と男性客に言った。
ちょっと表現するのが難しいが、通常鏡は前後が逆に映る。つまり、男性客が後ろにさがれば、男性客の背中が窓に大きくなって映る。
同様に顔が近づけば顔も大きくなって映ってくる。ただ、彼女の一言で気付いたのが、顔は布団から出てきてると言うよりも、窓から出てきてるように見える。
男性の背中は大きくなって映っているが立体感は無いのに対して、顔は出てくれば出てくるほど立体感を増している。
男性客に「こっちへ逃げて!」と言うと、直ぐにこちらへ逃げてきた。
顔はどんどん布団から這いずって出てくる。ズズズ ズズズという音は、入り口横の押入れから聞こえるが、窓から顔が立体的に出てくる。
それと同時に、段々と顔だったものがはっきり見えだす。今まで顔と思ってたが、顔で合ってるのかどうかを疑いたくなるような奇怪なモノが窓から出てきた。
それはグチャグチャな薄桃色の塊だった。体はグチャグチャになっており、それを顔のような塊が引き摺っていた。
その際に出る音がズズズだった。人の目の場所に垂れさがった目玉と、口の位置に窪みがあるため、人の顔に見えてただけで、実際は布団から何が出てきてるのかわからない。
今まで発狂していた女性客達も、何が起きてるのかわからずただ呆然としている。その瞬間、「そっちじゃねぇおぉ」と後ろから声が聞こえた。
それと同時に顔の様な塊は、
「ああああああああああああああああああああああああああああ」
と動物の鳴き声の様な叫び声を上げて、凄い速さで這いずり回り、窓の外に向かってくねくねと動きながら這って行った。
本当に何が起こったのか、何だったのかは分からず仕舞い。全員が何も声を発せれないし、理解しようにも理解できない状況。
時間がたち、寒さを感じ始めてきてから男性客が、「とりあえず、ロビーかフロントにでもいきませんか?」と全員に向かって言い、玄関前のロビーに向かい、他の従業員も駆けつけて暖房を入れてもらった。
毛布やら上に羽織る物やらを用意してもらい、暖かいお茶を飲みながら朝まで無言で待った。
他の従業員達には女性従業員から話をするも、「信じられない」と口にしていた。
さすがに大人6人が震えてるので、信じるも何もないだろうが。
朝方になり、女性客達は「荷物を取ってきて欲しい」と従業員に告げて、「なんでこんな目にあうのよ。なんなのこの旅館」と文句を言い始めた。
男性客と俺と彼女は少し話をして、起こった事を整理しようとした。「窓の外は墓地か神社でもあるんですか?」と彼女が従業員に聞くと、「外は崖になっていて、直ぐ下に川があるだけです」と答えていた。
そこで風呂場で起こった事を従業員に話すと、風呂の外も川だけとの事だった。結局何が起こったのかはさっぱりわからず。
外が明るくなってきたので、従業員が朝食を持ってきて、それを食べた。女性客達は直ぐに帰りたいからと、タクシー呼び、取ってきてもらった荷物を持って、そのまま旅館を後にした。
男性客と俺と彼女は、部屋に戻り荷物を纏めようとしたが、やはり恐怖が残っており、他の従業員に着いてきてもらった。
そして荷物をまとめて、運転手に車で駅まで送ってもらう事に。男性客は車で来てたようで、そこで挨拶を交わし別れた。
車に乗り込み駅へ向かう途中、車窓から川の方向を見たときに、何かが居る様な気がした。ただ、何も見えなかった。
駅に着き、運転手が「本当に申し訳ございませんでした。又の機会をお待ちしております」と言い帰っていった。
二度といくか。
彼女と色々考察してみたけど、あの塊が霊だとしたら何なのか。誰かに憑いていたのか。それともあの旅館にいたのか。
俺が金縛りに会った時に聞こえた、「助けて」は誰が言ったのか。結局わからないままです。
自分が何となく思ったのは、
部屋によって異なっているだけなのかも知れませんが、布団の置き場所が上下段が異なっていたのと、女性従業員に聞いた際に、やけにむきになって否定してたので、旅館側は何か知ってるのかな?とも思います。
自分は二度と行く気は無いですが、未だにその旅館はその温泉街で経営を続けています。場所は言いませんが、その辺りは何か曰くでもあるのかもしれません。
ただ実際変な体験だったので、表現するのも難しく、実際のところ何もわかってません。


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